【板金加工向けアルミ合金①】汎用性と加工性に優れたA1050/A1100/A5052/A5056/A6061/A6063の特性と使い分け
板金加工で選ばれるアルミ合金の基礎知識
板金加工において、アルミ合金は軽量性・耐食性・加工性に優れた素材として幅広く採用されています。特に1000系(純アルミ系)、5000系(Al-Mg系)、6000系(Al-Mg-Si系)は、汎用性が高く、船舶・建築・自動車・電装品など多様な産業で使用されています。
本記事では、板金加工で最も頻繁に使用される6種類のアルミ合金(A1050、A1100、A5052、A5056、A6061、A6063)について、それぞれの特性・用途・板金加工のポイントを解説します。1000系は高純度による優れた加工性と導電性、5000系は耐食性と加工性の両立、6000系は強度と汎用性のバランスが特徴です。
素材選定では、用途に求められる強度・耐食性・加工性・コストを総合的に判断することが重要です。
高純度・高加工性を誇る1000系アルミ合金
A1050(高純度アルミ)
A1050は純度99.5%以上の高純度アルミニウムで、優れた電気伝導性・熱伝導性を持ち、高い耐食性を誇ります。引張強度は約65MPaと低く、構造材には不向きですが、伸び率40%という柔軟性により、冷間加工・曲げ加工・深絞り加工に最適です。
主な用途は、電気部品、食品包装材、化学プラント設備、ヒートシンクなど、導電性・熱伝導性・耐食性が求められる分野です。板金加工では、柔軟性が高いため複雑な形状への成形が容易で、溶接性も良好です。ただし、強度が必要な構造部材には適していません。
選定基準としては、強度不要で加工性・導電性・耐食性を重視する場合に選択します。特に食品加工機器や電気機器の部品において、安全性と機能性を両立できる素材です。
A1100(純粋アルミ)
A1100は純度99.0%以上の純アルミニウムで、優れた展延性と美しい光沢仕上げが特徴です。A1050と同様に強度は低いものの、複雑な形状への成形に適しており、アニーリング処理により延性を最大化できます。
主な用途は、熱交換器フィン材、装飾部品、調理器具、絞り加工部品など、美観と加工性を重視する製品です。板金加工では、複雑な曲げ加工や深絞り加工が可能で、表面処理により美しい仕上がりが得られます。
選定基準としては、柔軟性と加工性、美観を重視する用途に最適です。A1050よりもわずかに純度が低いため、コストパフォーマンスに優れています。
1000系の最新動向
近年、1000系アルミ合金では、ラジアルシアローリングによる微細結晶構造形成技術が注目されています。この技術により、従来よりも強度を向上させながら、優れた加工性を維持できるようになりました。また、3Dプリンティング技術への適用研究も進んでおり、複雑な形状の部品製造への応用が期待されています。
耐食性と加工性を両立する5000系アルミ合金
A5052(最も汎用性の高い板金加工用アルミ)
A5052は、板金加工において最も汎用性の高いアルミ合金です。高い耐食性(特に耐海水性)、優れた加工性、中程度の強度を高水準で兼ね備えており、幅広い用途に対応できます。
主な用途は、航空機・船舶・自動車部材、アルミサッシ、薄板電装品カバー、食品加工機器など多岐にわたります。板金加工では、曲げ加工・深絞り加工に高い適性を持ち、TIG溶接・MIG溶接で安定した接合が可能です。アルマイト処理により、さらに防錆性を向上できます。
物性面では、引張強度が中程度で、耐食性は5000系の中でも特に優れています。マグネシウム含有により、加工硬化が適度に発生し、成形後の強度確保に寄与します。
選定基準としては、加工性・耐食性・軽量性を高水準で求める場合に最適です。コストパフォーマンスにも優れており、初めてアルミ板金を採用する場合の第一選択肢となります。
A5056(高強度・高耐食性)
A5056は、A5052よりもさらに高強度・高耐食性を実現したアルミ合金です。軽量性を保ちながら、海水や工業環境下での優れた耐久性を発揮し、溶接性も良好です。
主な用途は、船舶部品、車両部品、建築用パネル、マリンレジャー製品など、厳しい環境条件下での使用が想定される分野です。板金加工では、切削加工・曲げ加工が比較的容易で、溶接構造物への組み込みにより軽量化を達成できます。
A5052との使い分けとしては、より高い強度や厳しい環境下での耐久性が求められる場合にA5056を選択します。ただし、材料コストはA5052よりもやや高くなります。
5000系の最新動向
5000系アルミ合金では、ファイバーレーザーによる高精度切断技術が普及し、複雑な形状の部品製造が効率化されています。また、3D CADによる展開設計により、材料歩留まりが大幅に改善されています。EV(電気自動車)向けの軽量構造材としての活用も拡大しており、自動車産業での需要増加が見込まれています。
強度と汎用性を両立する6000系アルミ合金
A6061(バランス型の万能素材)
A6061は、強度と耐食性を高レベルで両立した万能型のアルミ合金です。押出加工性・溶接性・切削加工性に優れ、熱処理(T6処理)により引張強さ310MPa以上を実現できます。
主な用途は、自動車部品、航空機構造材、機械部品、LED照明ヒートシンク、ドローン・EVフレームなど、軽量性と強度を両立する必要がある分野で広く採用されています。
板金加工では、T6処理により高強度化が可能ですが、溶接時に強度が低下しやすい点に注意が必要です。また、曲げ加工では割れが生じやすいため、曲げ内Rを十分に確保する必要があります。切削加工性は良好で、精密な寸法公差を要求される部品にも対応できます。
物性面では、引張強さ310MPa以上(T6処理時)、硬さHB95程度と、アルミ合金の中では比較的高い強度を持ちます。耐食性も良好で、幅広い環境での使用に耐えます。
選定基準としては、軽量性・強度・耐食性のバランスを重視する場合に最適です。熱処理により特性を調整できるため、用途に応じた最適化が可能です。
A6063(押出成形・意匠性重視)
A6063は、押出成形に特化したアルミ合金で、建築用サッシフレームや装飾材として広く使用されています。高い耐食性、適度な強度、優れた表面処理性を持ち、美観を重視する用途に最適です。
主な用途は、建築用サッシフレーム、機械装置カバー、屋外設備パネル、形材・化粧材など、押出成形による複雑な断面形状が求められる分野です。
板金加工では、冷間加工・曲げ加工が比較的容易で、表面が滑らかなため、アルマイト処理により美しい外観を実現できます。A6061と比較すると強度はやや劣りますが、押出性と表面処理性に優れています。
A6061との使い分けとしては、強度・機械加工性を重視する場合はA6061、押出性・意匠性を重視する場合はA6063を選択します。
6000系の最新動向
6000系アルミ合金では、EV・ドローンのフレーム部品への採用が増加しており、軽量化ニーズに対応しています。LED照明のヒートシンク用途も拡大しており、熱伝導性と加工性の両立が評価されています。ファイバーレーザー切断とロボット溶接を組み合わせることで、複雑立体構造部品の効率的な量産が可能になっています。
用途別アルミ合金の選定基準
物性比較表
以下の表は、6種類のアルミ合金の主要物性を比較したものです。
| 合金 | 系統 | 引張強度 | 耐食性 | 加工性 | 溶接性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A1050 | 1000系 | 65MPa | ◎ | ◎ | ◎ | 電気部品、食品容器 |
| A1100 | 1000系 | 低 | ◎ | ◎ | ◎ | 熱交換器、装飾部品 |
| A5052 | 5000系 | 中程度 | ◎ | ◎ | ◎ | 船舶、自動車、サッシ |
| A5056 | 5000系 | 高 | ◎ | ○ | ◎ | 船舶、車両、建築パネル |
| A6061 | 6000系 | 310MPa(T6) | ○ | ○ | ○ | 自動車、航空機、EV |
| A6063 | 6000系 | 中程度 | ○ | ○ | ○ | サッシ、建築、化粧材 |
用途別選定フロー
以下のフローを参考に、用途に応じた最適なアルミ合金を選定してください。
- 強度不要、加工性・導電性重視 → A1050 / A1100
電気部品、食品容器、装飾部品など、強度よりも加工性や機能性を重視する場合 - 耐食性・汎用性重視、コスト重視 → A5052
船舶、自動車、建築など、幅広い用途で汎用的に使える素材が必要な場合 - 高耐食性・高強度、厳しい環境 → A5056
海水環境、工業環境下で長期間使用する部品に必要な場合 - 強度と汎用性のバランス、熱処理対応 → A6061
自動車、航空機、機械部品など、軽量性と強度を両立する必要がある場合 - 押出成形・意匠性重視 → A6063
建築用サッシ、装飾材など、美観と複雑な断面形状が求められる場合
板金加工での注意点
1000系(A1050/A1100)
- 強度不足に注意。構造部材には不向き。
- 柔軟性が高いため、精密な寸法精度が求められる部品では工程管理が重要。
5000系(A5052/A5056)
- マグネシウム含有により、加工硬化が発生しやすい。
- 溶接時の歪みに注意が必要。適切な治具設計と溶接条件の管理が重要。
6000系(A6061/A6063)
- 溶接時に強度が低下しやすい。溶接部の強度確認が必要。
- 曲げ加工で割れが生じやすい。曲げ内Rを十分に確保すること。
- 熱処理状態(O材、T4、T6等)により加工性が大きく変化。
汎用アルミ合金の選定で押さえるべきポイント
1000系(A1050/A1100)は、高純度・高加工性が特徴で、強度不要の用途に最適です。電気部品や食品容器など、導電性・耐食性を重視する分野で活躍します。
5000系(A5052/A5056)は、耐食性・加工性に優れ、板金加工で最も汎用的に使用されています。A5052は汎用性とコストパフォーマンスに優れ、A5056はより高強度・高耐食性を実現します。
6000系(A6061/A6063)は、強度と汎用性のバランスが良く、熱処理・押出成形に対応できます。A6061は強度重視、A6063は意匠性重視の用途に適しています。
素材選定では、用途・環境・コストを総合的に判断することが重要です。最新の加工技術(ファイバーレーザー、3D CAD、ロボット溶接)との組み合わせにより、より高度な板金加工が可能になっています。
さらに高強度が必要な場合は、【板金加工向けアルミ合金②】高強度アルミ合金編で、2000系・7000系(A2014/A2017/A2024/A7075)の特性を解説しています。航空宇宙・自動車産業向けの高強度素材をお探しの方は、ぜひご覧ください。
有限会社 武蔵工業の精密板金加工
有限会社 武蔵工業では、多品種少量生産に対応した精密板金加工を提供しています。アルミ合金の特性を活かした高品質な製品製造を得意としており、ファイバーレーザー・CNCプレスブレーキ等の最新設備による高精度加工が可能です。設計提案から試作・量産まで一貫対応しており、お客様のニーズに合わせた柔軟な対応を実現しています。
製造事例一覧:https://www.musasikougyou.co.jp/case/
最新工場設備:https://www.musasikougyou.co.jp/advantage/factory/



